「一銭五厘の旗」読後感

暮しの手帖社から出版されている「一銭五厘の旗」は同誌編集長であり、表紙や挿絵も描いた故花森安治の、人柄を偲ばせる文章が満載された書籍でした。歯に衣着せぬとはこのことを言うのでしょう。滑舌のいい喋り口調で、当時の社会問題をバッサリやっていく独自のスタイルは、今読んでいても古さを感じさせないばかりか、現在でも通用する箇所がいたるところに見られます。身近な問題で言えば「8分間の空白」にあった消防車が到着するまでの時間が8分から10分、その間に発見者が初期消火をしなければならない、街が複雑さを呈している今は消防車の到着を待っていられない、という趣旨の文章でしたが、現在でもこれはそのまま通用する重大な危機管理だと思いました。その他にも数え上げればキリがないくらいの問題提起がされていました。大衆雑誌であるには違いない「暮しの手帖」ですが、人々に豊かな暮らしを提供するために商品テストや優れた論評を掲載した類稀なる雑誌であったことが窺える一面がありました。編集部の努力も垣間見える「一銭五厘の旗」でした。

関連する投稿

  • 余白とは何か 学生時代に亡父の手伝いをしていました。亡父は造園業を営んでいて、数多くの庭石を仕入れて畑に置いてありました。その昔は丹沢の河川敷や真鶴へ石を探しに行ったこともありました。アルバイトとしてみれば稼ぎの […]
  • 朝夕の風景雑感 春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、目覚ましが鳴ってもなかなか起床できず、その分朝食は慌ただしい時間の中で済ませています。最近の調査で定時に朝食を取るかどうかで、生活習慣病に影響することが新聞に掲載 […]
  • 生活の豊かさを問う 「われわれが捨てたはずの、過疎に喘ぐ、消滅寸前の『ムラ』が、なぜ『豊か』なのか。ムラこそ、都市の豊かさでもって救われなければならない存在なのではなかったのか。都市の豊かさとは、われわれ自身が捨ててき […]
  • 何故奇想に惹かれるのか? フランドルの画家ボスやブリューゲルの奇想天外な版画を、先日まで東京で開催していた「バベルの塔」展で見て、空想の産物を面白がる気質が自分にはあることを改めて認識しました。現在読んでいる「奇想の系譜」( […]
  • 終焉までの道のり 現在哲学書を読み耽っているので、こんなことをテーマにしたわけではありませんが、どんなに贖ってもどんなに嫌がっても人には必ず死が訪れます。死を終焉として意識するのは動物の中で唯一理性をもつ人間だけです […]

Comments are closed.