造形美術としての文字

書道展に行くと自分は文字を抽象絵画として見てしまいます。文字には意味があるわけですが、その意味を文字から排除し、純粋な構成として画面を捉えて楽しんでいます。もちろん伝達するために書かれた文字を絵画的に見るのは困難です。書道展には自由奔放な作風があるためミロやクレーの絵画のように鑑賞できると思っています。象形文字はさらに楽しく、それぞれの記号のもつ構成要素に惹きこまれます。日本の墨で書かれた文字は、意味を知らない外国人にとっては、私たち以上に楽しめる造形美術ではないかと思うのです。自分も意味の分からないギリシャ文字が気に入っています。何かを表記する記号を造形美術に持ち込み、謎解きのような世界を表す絵画があります。文字の意味と造形を対峙させる絵画もあります。自分が陶彫の加飾として入れる彫りこみには文字のような記号がありますが、これはあくまでも造形要素なので意味はもちません。純粋に抽象性を追求していると文字のような構成が立ち現われてくるのです。文字を崩すのではなく、カタチが文字に近づくというアプローチです。造形美術としての文字あるいは記号は、自分の中ではこれからも発展可能なカタチなのです。

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