西洋の没落「起源と土地と」そのⅠ

「西洋の没落」(O.シュペングラー著 村松正俊訳 五月書房)の第二巻を読んでいます。その第1章「起源と土地と」の副題は「宇宙的なものと小宇宙と」です。生命の存在そのものの分析から始まる論証で、動植物の営みの中から人間の覚醒存在としての認識に至るまでが述べられています。本文中の気に留めた箇所を抜き出します。「血液はわれわれにとっては生きていることの象徴である。血液は生まれた時から死ぬまで、母体から子供の身体のなかに、目覚めている時でも睡っている時でも、決して休むことなく身体中を廻っている。祖先の血はその種族の鎖をめぐりめぐって流れ、それを運命、拍子それから時間という大きなつながりに結びつける。もともと、このことは循環の区分によって、しかもいつでも新しい分割によって生じたもので、しまいには雌雄という特殊な生殖器官が現れるようになり、これが、一つの瞬間を永続の象徴としたわけである。ところでこれらの生物がどうして生み、妊娠するか、どうしてこれら生物中の植物的なものが繁殖するように駆り立てられ、永久の循環を自分自身を超えて永続させようと駆り立てられるか、どうして一つの大きな脈搏が遠い魂のなかを通って牽引しながら、駆り立てながら、妨げながら、また破壊さえしながら活動するのか、これはあらゆる生命の秘密のなかの最も深い秘密であって、すべての宗教的神秘とすべての偉大な詩とがそのなかに入り込もうと努めているものであり、そうして、この悲劇性こそがゲーテをしてその詩『至幸の憧憬』において、また『親和力』において、揺り動かしたものである。」

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