横浜そごうの「いのくまさん」

先日、出張先から帰る途中に横浜駅で楽しいポスターが目に入りました。平仮名で「いのくまさん」と書かれ、落書きのような猫の群像があって、思わず横浜そごう美術館に足を運んでしまいました。それは画家猪熊弦一郎と詩人谷川修太郎がコラボレーションした絵本の原画を並べた展覧会でした。かつて香川県に行った際に丸亀駅前にあった現代的な猪熊弦一郎美術館を見て、その空間の爽やかさに我を忘れましたが、今回の展覧会を見て、その時の印象が甦ってきました。落書きのように描かれた顔、でもなかなかこんなふうに描けない独特な世界観を持っている猪熊弦一郎ですが、若かりし頃はマチスの影響が見られたり、ピカソの青の時代を彷彿とさせる具象的な絵画があって、猪熊ワールドに辿りつくまでの紆余曲折の画業がこの展覧会で垣間見られました。自分は猪熊弦一郎が渡米してからの作品が好きです。ニューヨークの都市の構築と混雑が入り乱れていて、色数が少ないにも関わらず明快な色彩にインパクトを感じます。先週訪れた村井正誠記念美術館もざっくりした抽象絵画が印象的でした。村井正誠が1905年生まれで1999年没、猪熊弦一郎が1902年生まれで1993年没。2人が活躍していた日本の美術界は、大戦をはさんで革新的な機運が高まりつつあった時代です。そんな中で自己を貫いた芸術家魂に心が打たれました。

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