「陶紋」を携えて叔父宅へ

今回の個展に出品した「陶紋」のひとつを叔父が購入してくれました。今日は自分の勤務終了後に「陶紋」を携えて叔父宅に行きました。叔父は声楽家です。叔父の家にはヨーロッパの品々が多く展示されています。1階にはプライベートのレッスン室があり、2階には個人住宅にしては立派なホールがあります。そこには叔父が若い頃小澤征爾と共演したオペラの写真が飾ってあります。そんな居住空間に自分の作品が合うかどうか少々不安もありましたが、収まるところに収まって良い雰囲気になりました。叔父は「陶紋」の中に蝋燭を入れて照明を落として楽しんでいました。叔父の声楽もそうですが、自分の作品も心に潤いを齎すものだと思います。自分はそんなことを考えて作っていませんが、生活の場に作品が置かれると空間が変容してきます。西欧にはバロックやロココの彫刻等が周囲の空間に馴染んで存在していますが、現代日本の居住空間にも石や木や陶の立体作品があってもいいと感じました。それは照明を内蔵するものであっても、単なるオブジェであってもよいと思います。モノを飾ったり装う伝統は日本にもあります。そこには日本独特の美意識があって、モノの価値変容も認められ、それが禅思想と相俟って、西欧に影響を与えています。そんなことを思いながら、叔父宅に見事に収まった「陶紋」を見ていました。

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