暮らしの中の造形

20代の頃、5年間の滞欧生活で感じたことは、暮らしの中に取り入れられた造形全般が、生活を豊かにし、心に余裕を与えてくれることでした。それは西洋伝統の空間装飾に限らず、現代的な生活にも当てはまり、とりわけ当時訪ねたオーストリア人彫刻家宅の真っ新な住居空間には感動すら覚えました。自分の生育文化を考えるに、暮らしの中に取り入れたい造形はどんなものか、帰国後に思いを巡らせました。大正末期に興った柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎らの民芸運動に注目したのはそんなことが契機になっています。同じ時期に栃木県益子に出かけ、濱田庄司の陶芸の美しさに魅せられました。陶芸は海外にいた時から彫刻の材料にしたいと考えていたので、その素材感をまず自分の生活に取り入れようとしました。あの頃買い求めた器の釉薬の流れが、J・ポロックやS・フランシス等のアメリカ人現代画家の作品を彷彿とさせると感じました。自宅の家具も飛騨で作られているものを買い求め、費用が嵩むのを承知で、少しでも暮らしの中に気に入った造形を取り入れようとしました。しかしながら民芸調の家を建てるのには経済的に無理があって諦めざるを得ないこともありました。今でも益子あたりにある石造の蔵を見ると何とも言えない良い気持ちになります。暮らしを造形的に豊かにする努力、これは生涯続けていきたいものです。美を追求するなら作品だけでなく自分の身の回りにも気を配りたいと思います。

関連する投稿

  • 週末の展覧会巡り Ⅱ 今日も昨日に続き、美術館に出かけました。今日は朝5時に起床、家内と自家用車で一路栃木県へ向かいました。目指したのは足利市立美術館で開催中の「石田徹也展-ノート、夢のしるし」。31歳で夭折した画家石田 […]
  • 秋分の日は美術館・画廊を散策 今日は秋分の日でした。職場は週休2日なので、連休の実感はありませんでしたが、このところ秋の気配を感じているのは確かです。今日は早朝に工房に行って、明日の陶彫成形のために大きなタタラを7枚作りました。 […]
  • 歯車のRECORD 20代の滞欧時代に作った自分の初期の版画に、車輪のような歯車のようなイメージを描きました。具象彫刻をやっていた自分が初めて抽象を意識した作品で、版下は捨てられずそのまま日本に持ち帰ってきました。まだ […]
  • 本焼きの心配 震災で大変な被害に遭われた方々を思えば、自分の心配なぞ取るに足りないことですが、深夜3時頃に横浜でも震度3程度の揺れがあり、昨日窯入れした作品がどうなっているのか心配になりました。今日は仕事帰りに工 […]
  • 新しい洗濯機が来た日 家電量販店に行って洗濯機を購入しました。20数年前に購入した洗濯機を今まで使っていたと店の人に言ったら、よくぞ今まで何事もなかったと驚かれました。最近洗濯した衣類に小さなゴミがついていることに家内が […]

Comments are closed.