M・エルンスト「森」連作
2012年 5月 25日 金曜日
過日、横浜美術館で開催中の「マックス・エルンスト」展に行き、何点かの作品に魅せられました。自分は偶発的かつ間接的な技法を利用した比較的大きめの油彩が気に入っています。とくにデカルコマニーの面白さを自分はRECORDにも応用しているくらいです。とりわけ「森」シリーズとも言うべき「石化した森」「森と太陽」等に見られる金環日食のようなリングに惹かれます。図録に「森の奥底あるいは蝕の光景」という解説がありました。「『蝕』は伝統的に、ひとつの時間軸の終焉と新たな時間軸の神秘的な始まりを表徴する。エルンストのリングは、禍々しさと聖なるものが混淆する『蝕』の絵画的な個人言語化と言えるものだ。」とあるようにリングは、蝕まれていく象徴として表現したようです。リングの下方に描かれている森は、エルンストの幼児体験からイメージされているようですが、確かにドイツには深い森が点在し、森によって培われた思想や文化があると思います。自分も若い頃にドイツで過ごした経験があるので、神秘的で漆黒なる森の存在が理解できます。そうした森をフロッタージュ(擦りだし技法)やデカルコマニーでマッス(量感)として表しているのが、このシリーズの独特なところです。
関連する投稿
- 横浜の「マックス・エルンスト展」 先日、横浜美術館で開催中の「マックス・エルンスト展」に行ってきました。シュルレアリスムの主流な芸術家の一人であるドイツ人画家マックス・エルンストは、画風がシュルレアリスムであるなしに関わらず、自分は […]
- シュマイサーの連作版画について 「私の作品を流れている主題は、変化ー人間に、物あるいは風景に、あるいは私に繰り返し起こった変化だ。版画がもつ可能性のうちで、最も魅力的なもののひとつがステートだ:版を刷り、さらに手を加え、変更し、ま […]
- 汐留の「アール・ヌーヴォーのガラス」展 東京では既に終わってしまった展覧会ですが、「アール・ヌーヴォーのガラス」展はなかなか見応えのある印象的な展覧会だったので、感想を述べたいと思います。パナソニック汐留ミュージアムは興味深い企画展が多く […]
- パウル・クレーの授業 先日見に行った東京ステーション・ギャラリーで開催中の「きたれ、バウハウス」展では、バウハウスの教壇に立っていたドイツ人画家パウル・クレーの作品の他に、クレーに師事した学生たちの作品もあり、大いに興味 […]
- 「ゼロ時間」アンゼルム・キーファー ドイツの画家アンゼルム・キーファーに興味を抱いたのは、1998年に箱根の彫刻の森美術館で開催された「アンゼルム・キーファー展」を見たことに端を発します。ナチスの負の歴史を直視し、ナチス式敬礼の写真を […]
Tags: イメージ, ドイツ, 展覧会, 画家
The entry 'M・エルンスト「森」連作' was posted
on 5月 25th, 2012
and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.