M・エルンスト「森」連作

過日、横浜美術館で開催中の「マックス・エルンスト」展に行き、何点かの作品に魅せられました。自分は偶発的かつ間接的な技法を利用した比較的大きめの油彩が気に入っています。とくにデカルコマニーの面白さを自分はRECORDにも応用しているくらいです。とりわけ「森」シリーズとも言うべき「石化した森」「森と太陽」等に見られる金環日食のようなリングに惹かれます。図録に「森の奥底あるいは蝕の光景」という解説がありました。「『蝕』は伝統的に、ひとつの時間軸の終焉と新たな時間軸の神秘的な始まりを表徴する。エルンストのリングは、禍々しさと聖なるものが混淆する『蝕』の絵画的な個人言語化と言えるものだ。」とあるようにリングは、蝕まれていく象徴として表現したようです。リングの下方に描かれている森は、エルンストの幼児体験からイメージされているようですが、確かにドイツには深い森が点在し、森によって培われた思想や文化があると思います。自分も若い頃にドイツで過ごした経験があるので、神秘的で漆黒なる森の存在が理解できます。そうした森をフロッタージュ(擦りだし技法)やデカルコマニーでマッス(量感)として表しているのが、このシリーズの独特なところです。

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