ワグナー・ナンドール美術館
2012年 5月 7日 月曜日
先日、栃木県益子へ行った時にワグナー・ナンドール美術館を訪ねました。益子の陶器市会場から歩いて数分の小高い丘の上に美術館はありました。ワグナー・ナンドールというハンガリー人彫刻家を知ったのは、この時が初めてでした。「こんな雨の中をよくいらっしゃいました。今日は誰も来ないかと思いました。」と受付の婦人に招かれて美術館に入ったら、その建築空間に忽ち魅せられてしまいました。丘の段差を利用した美術館には、実際に作家本人が使用していた住居兼アトリエ、茶室、学生寮があり、さらに没後に建てられたギャラリーや野外展示場がありました。ワグナーは現ルーマニアに生まれた人で、ブタペストの美術大学在学中に第二次大戦に赴き重傷を負ったようです。その後のハンガリー動乱によってスウェーデンに亡命を余儀なくされ、そこで知り合った日本人女性と結婚、栃木県益子にやってきた経歴があります。言わば世界情勢に翻弄された人生を歩んだ人で、作品のテーマが世界幾多の宗教思想や哲学に向かったのは十分理解できると思いました。歴史上の偉人たちが集う空間を具象表現した「哲学の庭」は作家の代表作で、美術館にも野外展示されていました。自分は技巧上の完成は認めるものの、意図が説明的すぎて今ひとつ心に入り込むことはありませんでした。表現が具象ではなく具体なので、そこに作家が広い世界観を捉えようとしているにも関わらず、逆に狭義な印象を持ってしまうのは私だけでしょうか。美術館そのものは素晴らしい環境の中で作品を鑑賞するのに相応しい条件を備えていました。
関連する投稿
- 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
- 週末 久しぶりの美術館巡り 作品の制作工程が厳しい中、3月になって初の美術館巡りをしました。東京に出かけていくのは久しぶりでした。ギャラリーせいほうにも立ち寄って7月個展の打ち合わせを行いました。まず最初に訪れたのは東京上野の […]
- ヴァンジ彫刻庭園美術館 先日の日曜日に相原工房スタッフの遠足でクレマチスの丘に行ってきました。ビュフェ美術館を見た後、ヴァンジ彫刻庭園美術館に行きました。私はヴァンジ彫刻庭園美術館は初めてでした。天気に恵まれたおかげで彫刻 […]
- 夏季休暇 美術館巡り 今日と明日の2日間夏季休暇を取っています。先週の2日間の夏季休暇は菩提寺の墓参りと長野県麻績にいる彫刻家池田宗弘先生宅にお邪魔して2日間を過ごしました。今回の夏季休暇の予定では、今日は都心の美術館巡 […]
- 3つの美術館と4つの展覧会 久しぶりに美術展三昧の日でした。付き合うなら一日に行く美術展はせいぜい3つまでと家内に言われているのですが、今日家内が胡弓の演奏に出かけたので、知り合いの美大生に声をかけました。そこで今日は美大生と […]
Tags: ギャラリー, 彫刻, 芸術家
The entry 'ワグナー・ナンドール美術館' was posted
on 5月 7th, 2012
and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.