フォルムとは何か?

色彩のことを考えているうち学生時代から拘り続けているフォルムについてもボンヤリと考え始めています。色彩感覚に合わせれば形体感覚と言うべきでしょうが、フォルムというコトバが一般的なので今後フォルムというコトバを使います。自分にとってフォルムの認識は外界にある対象物を写し取る作業から始まりました。いわゆる塑造で、そのねらいとするところは表面より内部の構造を把握する学習でした。核となる心棒から粘土をつけて形体を膨らませていき、その量を捉えながらプロポーションのバランスや動きを表現する手法です。最初の塑造では、いかに正確に対象物を捉えることができるかが評価されました。表面処理ばかりに気がいくと、構造があやふやになって立体を成さなくなるという彫刻の基礎基本です。そのうちしっかりした構造をもつ立体は美しいと感じるようになり、やがて立体性を追求する姿勢が芽生えてきました。塑造や彫造という手法から離れて空間を解釈するようになり、そこから現代彫刻の扉を開けることになります。フォルムとスペースは一体化されたものと感じました。それは何もない空間(スペース)に物体(フォルム)を配置することによって空間の質が変わるというものです。そこでの空間体験は人の心理に何らかの影響を与えます。現代彫刻が街に進出し、建築との共存を試行するのはそんな理由によるものです。自分もギャラリーの空間を自己流に解釈する作品を毎年提示しています。フォルムとは何か?まだまだ考えたいテーマですが、自分のことを振り返ってフォルムとの出会いや認識を述べてみました。

関連する投稿

  • 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
  • 週末 個展搬入日 いよいよ14回目の個展のために作品を搬入する日がやってきました。朝9時半に運送用トラックが工房にやってきました。運送業者は2名、こちらのスタッフは後輩の彫刻家や学生2人、そこに家内と私を加えて5名で […]
  • 師匠との関係について 長野県に住む彫刻家池田宗弘先生から雑誌「秘伝」が送られてきました。「秘伝」は武道に関する雑誌でしたが、私は武道に縁がなく、その精神性は分かったつもりでも理解できるところまでいっていません。池田先生は […]
  • 今日はギャラリーせいほうへ… 公務員の仕事が一段落したので、今日は年休をもらって東京銀座のギャラリーせいほうへ家内とやってきました。開館の午前11時にさっそく家内の友人たちが来てくれました。10人の来廊者の前で作品の解説をお願い […]
  • 連盟ニュースより記事抜粋 私は日本美術家連盟(一般社団法人)の彫刻部に所属しています。そこから毎月「連盟ニュース」が郵送されてきて、記事を楽しみにしています。4月号は「ご意見番に聞く」というコーナーで、私にとってお馴染みのギ […]

Comments are closed.