色彩感覚について考える

以前のNOTE(ブログ)に「色彩感覚とは何か?」という題名で書いた一文があります。学生時代より自分は色彩表現が苦手で、自分の作品が美しいと思ったことはありませんでした。絵画やグラフィックデザインを選ばなかった理由のひとつが色彩に対するコンプレックスがあったと思っています。「クレーの日記」にチュニジア旅行の様子があって、こんな一文があります。「色は、私を捉えた。自分のほうから色を探し求めるまでもない。私には、よくわかる。色は、私を永遠に捉えたのだ。私と色とは一体だ、これこそ幸福なひとときでなくて何であろうか。私は、絵描きなのだ。」北アフリカの風物に接し、そこで色彩の何たるかをクレーは取得し、その後の眩く輝く絵画の扉を開けることになるのは美術史の伝えるところです。色彩感覚は理屈ではなく、色彩の組み合わせによって感情の襞に引っかかってくる個人的な感性によるものです。個人によってその感受する強弱はあるものの美しさを感じ取る絶対的多数の原理は存在するのではないかと考えます。チュニジア旅行以後、クレーの絵画が美しい色彩にあふれ出すのは万人が認めるところであり、翻って学生時代に自分の色彩感覚の乏しさを嘆いた自分も色彩感覚の何たるかが理屈抜きでわかっていたことになるのではないかと思うのです。RECORDで色彩に改めて立ち向かっている自分は、自分がイメージする色彩を得たいがためと思っています。色彩という魔術を何とか取り込んでいきたいと自分は切に願っています。

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