描写に飢える

幾何抽象的な作品ばかりやっていると、具象的な傾向に引き戻されていきます。これは10代の最後になって美術家を志すために精一杯やっていたデッサンの影響です。ギリシャ彫刻の模造である石膏像や静物を木炭や鉛筆で描いていました。その狭い世界の中で紆余曲折して10代から20代初めまで過ごしていました。彫塑も同じです。紙が空間に代わり、鉛筆が粘土に代わっただけで、デッサンの勉強には変わりはありませんでした。巧く描ける友人を羨んだり、蔑んだりしながら自分自身を見つめる時間を持ちました。良くも悪くも人生の過敏な時期に、自己表現の術の何たるかを考えていたことは、その後の人生に何らかの影響が出ると思っています。最近、描写がしたいと思うようになりました。こうした願望が出るのは、自分がずっと美術の世界の中に浸っていた証であると思います。今の自分にはRECORDという小さな創作活動があって、幸い描写を試みる機会があります。鉛筆ではなく描き損じが出来ないペンを使って、描写の欲望を満たしています。造形的な計画の具現化ではなく、こうした欲望もあって、それらを全て含んだものが創作行為なのだと思います。描写に飢えるのは自分にとって幸せなことで、これが続く限り創作活動は大丈夫と自負しています。

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