「解放」ベン・シャーン
2012年 1月 24日 火曜日
自作にも「構築~解放~」という作品がありますが、ここで取り上げるアメリカ人画家ベン・シャーンによる「解放」は、象徴的な名作です。これは第二次世界大戦中のフランス解放をテーマにして描かれたガッシュによる絵画で、内容は瓦礫の中で遊ぶ子どもたちの情景です。図録によると、子どもたちは仮面のような表情をしていると書かれています。確かに子どもに表情はありません。楽しく遊んでいるはずが、絵に近づいてみると孤独を湛えた無表情な子どもの顔に異様さを覚えます。これが本当の意味の「解放」なのか疑問に感じるのは私だけではないはずです。「解放」されても楽園がくるとは限らないと頭の隅で私も考えて「構築~解放~」を作ったように記憶しています。ベン・シャーンはもっと直接的で具体的です。「象徴とは…戦争が私に与えた虚無と荒廃の意味を形にし、戦争の非道さをくぐりぬけて生き抜こうとする人間の小ささを形にする、たった一つの方法になっていた」とベン・シャーンは語っています。大きな悲劇の中で、それでもなお生きていこうとする人間の意志、それが人間の心の「解放」なのかもしれません。
関連する投稿
- 「中空の彫刻」を読み始める 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
- 「火の神・山の神」を読み始める 「火の神・山の神 九州の土俗面考【1】」(高見乾司著 […]
- アフリカ芸術との出会い 横浜美術館で開催中の「ルノアールとパリに恋した12人の画家たち」展の図録の中で、20世紀初頭のパリに集った芸術家たちが、アフリカ芸術に感銘を受けて、自らの表現の中にプリミティヴな生命を宿した造形を取 […]
- 「今日はマスクをつけよう」 表題は国吉康雄の絵画につけられた題名です。マスク(仮面)の魅力は、私も昔から憑かれていて、マスクが画題になる画家には一目置いているのです。たとえばベルギーの画家ジェームス・アンソール。アンソールは両 […]
- 2月RECORD「匂い立つ土俗の構え」 今月のRECORDのテーマを「匂い立つ土俗の構え」にしました。自分は土俗性、土着性の強い造形が大好きです。アフリカを初めとする世界各地の仮面の収集もやっていて、自分の制作動機をそこに求めることがあり […]
Tags: 仮面, 書籍, 画家
The entry '「解放」ベン・シャーン' was posted
on 1月 24th, 2012
and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.