「戸谷成雄展 洞穴の記憶」

先日行ったヴァンジ彫刻庭園美術館で表題の展覧会をやっていました。彫刻家戸谷成雄氏はチェンソーで材木を刻んで灰色に彩色した独特の世界を持った人です。細かく突起した部分や襞となっている部分がさまざまな連想を生みだす彫刻は、時に地上に垂直に現れたり、時に地中に窪んでいきます。その痕跡は人間の営みを象徴的に表現していて、自然物に確かな刻印を残しているように思えます。最近作ったものでも遙かな時間を経ているようにも思えます。森を表現した作品群の中にいると、垂直に立てられた多くの木材がまるで人々の姿のようでもあるし、また仏像が並んでいる静謐な寺院の中にいるような錯覚に陥ることがあります。この日は視覚や触覚を刺激する展覧会に出会えて、とても充実した一日を過ごせました。

関連する投稿

  • 週末 制作と鑑賞の狭間で… 自分の制作には思索あり、他の作品の鑑賞もまた思索あり、で制作時間に追われているのは重々承知の上で、今日の午後は美術館に出かけてしまいました。午前中は午後の時間を空けるため、木彫の作業に集中力をもって […]
  • 週末 4つの展覧会巡り […]
  • 東京の「保田春彦展」 先日見に行った東京の京橋にある南天子画廊での「保田春彦展」は、自分の胸中に深く重い印象を残す内容でした。作家が懸命に造形活動に向かう姿勢には、頭が下がる思いです。自分も「老い」を感じ始めたら、こうで […]
  • 辻晋堂の彫刻 八木一夫のオブジェ焼に関する書物を読むと、そこにちょいちょい辻晋堂という名が出てきます。彫刻家辻晋堂は亡くなられて随分経ちますが、ギャラリーせいほうで個展をやっていた作家でした。自分は学生時代に個展 […]
  • 「炻器と木彫」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]

Comments are closed.