「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」読後感

「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」(ジャン・ジュネ著 鵜飼 哲訳 現代企画室)を読み終えてみると、これは特異なフランスの文筆家ジャン・ジュネの詩情や思索の裏づけとなっている人生観を読み解く扉だと思いました。本書に収められた6編のエッセイのどの扉を開いても、ジュネ独特の論調があって、彫刻家ジャコメッティや画家レンブラント、サーカスの綱渡り芸人といった描く対象を見てもジュネらしさが伝わりました。解説の中に「白」というキーワードが出てきます。ジャコメッティの絵画における空白、それは単に空白でなく、そこにも見えないデッサンが存在する意味のある空白を「白」として扱っています。彫刻も然り。粘土で作られた実像そのものではなく周囲に存在する意味のある空間。そうした「白」がジュネの人生にもあって、空白期こそ表現を獲得するための重要な時期と位置づけているようにも思えます。暫らく書棚に仕舞いこんだ後、再び本書を取り出す機会があるでしょう。再読をしたいと思える一冊だからです。

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