「生きのびるためのデザイン」読後感

10代の終わりに読み始めて途中で放棄し、30数年経った今になって再読を始めた書籍は結構あります。A・ブルトンの著作も然りで、最近になってようやく全て読み終えた按配です。工房に出入りしている若い美大生に私の若い頃に挫折した書籍を貸していますが、どうやら彼女も挫折しているらしいことがわかりました。ある程度の知識や経験がないと難解極まりないと感じるのは誰でも同じなのだと思います。さて、表題の書籍ですが、当時工業デザインを学ぼうとしていた高校生だった私にとっては大変厳しい内容で、派手で浮ついたデザイナーを夢見ていた自分の進路は、社会的責任を負うという壁にぶち当たって儚く散ってしまったのでした。もちろん現在の自分は、ある組織の管理職として常に責務を背負っているので、工業デザイナーとしての社会的責任とたいして違いはないと感じています。30数年経った今なら理解でき、また共感できる箇所も多いのが本書です。人間が生存していくために何が必要か、デザイナーは今何をなすべきかを問う根源的な職業課題が描かれています。古い書籍で在庫があるのかどうかもわかりませんが、工業デザインを学ぶ若い世代に是非とも読んでいただきたい一冊であろうと思います。

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