窯入れが始まると…

窯入れが始まると、出勤前の早朝に工房へ行き、窯内の温度を確認し、また仕事帰りにも工房に立ち寄っています。自動的にコントロールされる電気窯なのに、自分は温度が気にかかって仕方ないのです。自分の手の届かないところで作品化される陶彫は面白い反面、不安なところがあります。自分はこの焼成という過程が好きで、陶を素材にした彫刻を作っているわけですが…。若い頃からずっとピカソやミロの自由闊達で色彩豊かな陶芸に魅かれています。かつて暮らしていたオーストリアのウィーンでは、フンデルトワッサーの立方体を歪ませた大き目の壺がウィンドゥに飾られていて、ケルントナー通りを歩くたび、そのウィンドゥを飽きることなく眺めていました。海外の芸術家の陶を素材にした作品が初めに目に飛び込んできましたが、帰国した後は栃木県や茨城県の陶芸の里に関わりをもって現在に至っています。窯とのつきあいは1985年に日本に帰ってきてから始まっています。だいぶ時間も経って、窯入れも慣れたはずですが、やはり窯入れが始まると、そわそわ落ち着かない現状は最初の頃と変わりません。水曜日か木曜日に窯出しをする予定です。今回もどうなっているのか神のみぞ知る結果です。

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