窯とのつき合い

陶彫を始めた頃は、作業場も付帯設備としてあった陶芸用の窯もすべて借り物でした。その時は、自分の好きな時間に作業をして窯入れをすることは出来ませんでした。でも作業場を借りていた時期が長くて、ギャラリーせいほうで個展をした最初の頃の作品は、いずれも借りていた作業場で作ったものでした。自分の工房が持てたのは、つい3年前のことです。そこに窯を設置して、ようやく自分の好きな時間に窯入れをすることが出来るようになりました。窯とのつき合いは随分経ちます。窯は自分にとって何にもまして大切な道具です。陶彫制作で一番最後に窯に入れるという工程は、とても面白くてハマってしまいます。何しろ最後になって運任せ、別の言い方をすれば炎の神に全てを委ねる儀式をして作品が生まれてくるのです。制作者としてはスリル満点で、落ち着かない気持ちで数日間を過ごしますが、窯出しした作品に再会すると、今まで手中で大事に育ててきたモノが自分の手を離れて遠い旅路から帰ってきたようなそんな気分にさせられます。今日は管理職仲間との夜の懇親会がありましたが、遅い時間に帰宅して工房に立ち寄りました。先日窯に入れておいた作品が出来上がっていて、すぐ窯出しをしました。また次の窯入れを行い、落ち着かない数日間を過ごします。次の窯出しは土曜日です。窯とのつき合いも蜜月関係が続けばいいのですが、炎の神の気まぐれに翻弄される時もあります。面白いと言えば面白い、不安と言えば不安な創作活動です。

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