「問いなき回答」を読んで

読書は通勤時間帯でしか出来ず、しかも短い乗車時間の中で細切れになった評論をとつおいつ読んでいる有様です。もっと楽に読める本を携帯すればよいものを、敢て難解な評論集に手を出してしまうのは何故なのか自分でも理解できないのです。今読みたいものを読むとしか言いようのない気分です。やっと読み終えた「問いなき回答」(建畠哲著 五柳書院)はオブジェを通じ現代美術の側面を論じたもので、繰り返し読み込まないと理解に苦しむ箇所が多々ありました。それでも最後に付章として掲載されていたインタビューの一文に希望と勇気を頂きました。「アートって、人をいらいらさせる部分ってあると思うけど、最終的には、われわれの心を救ってくれるものだと思うんです。もしそういうふうな力につながらないんだったら、ぼくはアートっていらないと思う。ただ不安に陥れ、恐怖に陥れ、不愉快な思いにさせるだけなら。表面的にはそうであっても、最終的にはわれわれを救済してくれるもの。どんな反社会的な、悲惨な行動をしても、志の高潔さはすぐれたアーティストにはある。~略~」このインタビューがあって良かったと思える読後感でした。

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