「礒江毅 グスタボ イソエ」展

先日、東京練馬にある区美術館で表題の展覧会を見てきました。礒江毅は2007年に53歳で世を去った夭逝の画家です。礒江毅は1954年生まれ、私は1956年生まれですからほとんど同世代なので、自分としては人事ではなく心中は穏やかではありません。去年展覧会を見に行った鴨居玲や有元利夫も夭逝した画家で、何か共通したものを探してしまうのは私だけなのでしょうか。共通していると言えば比較的若いうちにスタイルを確立し、それが世に認められ、ひとつの頂点を形成してしまうことかもしれません。これ以上何をすればいいのだろうと鑑賞者に思わせるほど完成した画業をもっていて、それは己を突き詰めた結果として得られる世界なのです。礒江毅の絵も、写実に関しては全体から細部に至るまで気が抜けないほど描写に長けた一種の凄みが表れています。描ききった存在感。それは絵の具の存在が消え、描写する行為も消え、実在そのものに迫るものです。ヨーロッパの伝統描写を踏まえながら、そこに自己の世界観を確立した日本人画家。スペインで評価されたのもよくわかります。画面構成に日本人らしい肌理の細かさと大胆な省略があって大変心地よい画風になっていました。

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