11‘恩師からの手紙

もう80歳になろうかという恩師が毎年銀座まで個展を見に来てくれます。文筆家の笠原実先生で、横浜ゆかりの文学に関する著作も出しています。自分は仕事の関係でずっとギャラリーにいられないため、毎回手紙による批評を頂いています。「自分の中から必然として生まれる造形を大切にしているご様子、そのとおりだと思います。『生まれる』から『生む』の方向でしょうか。『構築~楼閣~』に貴君の原風景を見るような印象を受けました。渾沌とした現実から多様な欲望が楼閣となって推積し増殖し、それらと競い合うように未来を構築しようとする意志が、放射状に伸長する造形に、貴君の現時点での創作意欲を垣間見る思いでした。『陶紋』が面白い作品でした。その折々の人間の心象風景がうかがえるようで楽しい時間をいただきました。」過大な評価を頂きましたが、確かに原風景を探し求めている自分がいるのです。自分とは何かを常に問いかけていて、無理をせず、背伸びをせず、自分の生きた証を素直に表現できるモノが造形できたら幸せと思います。また、明日から新作に立ち向かい、原風景を求める旅を続けます。

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