内向きな制作・外向きな発表

創作は工房に籠もって一人でやっています。若い世代が工房に出入りしていても創作活動は常に一人です。共同制作はやったことがないし、もちろん今まで組織を作ることは皆無でした。公務員としての自分と、彫刻家としての自分はまるで別人です。創作活動は内向きな自分になって、自分自身との対話から生まれるものです。自分はそんな引き篭もった状況が結構好きで、心は気楽な居所を見つけて悦に浸ります。どんなに苦しんでいても外からは気づかれないし、だからといってネガティヴな造形をやっているわけではなく、空間の捉えは常にプラス思考だと思っています。でも誰にも見られないところで心を遊ばせながら造形していくのが楽しいと思えるのです。ところが現在開催している東京銀座での個展は、そんな内向きな制作事情とは無関係に外に向けて何かを発信しています。正直そうした行為が恥ずかしいと思うこともあります。心のカタチを吐露しているのですから、恥ずかしいのは当然かもしれません。人に見てもらいたいくせに恥ずかしいというのは矛盾する不思議な感覚です。毎年個展を開催していて発表することに慣れることはありません。搬入・搬出や展示の段取りには慣れましたが、内向きな制作に照明があたり、やがて作品が自分の手を離れていく瞬間に立ち会うのは、何とも複雑な心境なのです。

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