「The Klee Universe」

パウル・クレーの作品集を折に触れて眺めています。「The Klee Universe」という厚めの洋書です。グロテスクで幻想的なエッチングがあったり、クレーらしい記号化された世界が多く掲載されていて飽きることなく見ています。戯画化された線描が心の琴線に触れることがあります。一見あどけない表情の絵が、畏怖の念をもって再び立ち現れてくるようにも感じます。クレーはどんな思いでこんな世界を描いたのでしょうか。何か心理的な分析を試みたくなるのは私だけでしょうか。繰り返される色彩のパターンをもつ絵は北アフリカで見た情景や風物が昇華した結果でしょうか。自分が一日1点ずつ作っているRECRDの制作を始める時は、一旦クレーの印象を記憶の奥に仕舞いこんでから行います。クレーに引きずられてしまうからです。でもイメージが固定化してくると、決まって自分は「The Klee Universe」を開きます。そこで今一度自分の世界を見直し蘇生を図るのです。クレーは模倣を許さない作家です。でも、イメージの何たるかを与えてくれる作家でもあると思っています。

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