描く行為 描かぬ行為

美術の専門家になると決めたときに、まずデッサンを行いました。自分が高校生の時で、ギリシャ彫刻を模した石膏像を木炭で描きました。その頃は美術という大枠の中にいて、美術で何を専門に選ぶべきか決めていませんでした。そのうち工業デザインに希望が絞られてきて、デッサン用具は木炭から鉛筆に変わり、モチーフも説明的な要素の多い静物になりました。壜は壜らしく缶は缶らしく質感まで描く行為に相当な時間を費やしました。平面や立体構成という方法も教わりました。当時は描く行為が8割、描かぬ行為(構成)が2割くらいの比率で自分は捉えていました。結局、最終的には彫刻を専門にするようになり、描く行為と描いたものを作る行為に移っていきました。描かぬ行為は大学では置き去りにしたまま、常に紙に鉛筆でデッサンし、空間に粘土でデッサンする、いわば描く行為が主流を占めていきました。現在の自分はどうでしょう。発掘シリーズや構築シリーズは描かぬ行為によって作品化を図っています。描かぬ行為のほうが描く行為よりずっと長く付き合っていることになります。エスキースは描くというより設計や寸法をメモする程度で済ませています。でも描く行為をある時期徹底して行っていたことが決して無駄ではないと感じています。イメージを捉えやすくなっていること、完成図を描写表現できることが大きいと思います。描く行為と描かぬ行為、双方に有機的な繋がりがあると感じています。

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