発見・再発見で変わる美術史
2011年 6月 21日 火曜日
世界の美術史であれ、我が国の美術史であれ、無名だった芸術家の発見や再発見によって時代の奥行きが出たり、また美的基準が見直され価値感が大きく変動することがあります。停滞が続いた時代が破壊と創造を繰り返す時代に変わるときに、その時代を牽引する芸術家もいれば、表舞台に出てもよさそうな力量をもっているにもかかわらず、時代の風潮の中に没した芸術家もいます。日本の近代美術史も、最近になって取り上げられた伊藤若冲や曾我蕭白のような画力をもった画家が発見されて、その時代の様子がわかってきました。まだ謎を残す部分は、今後の研究を待ちたいと思います。先日、江戸東京博物館に久しぶりに出かけた折、思わぬ興奮が自分の体内を駆け巡りました。狩野一信という画家を自分は知りませんでした。五百羅漢100点。緻密で西洋画の陰影法を取り込んだ凄みのある画風。伝承や寓話をテーマにしながら、人物や動植物における卓抜したデッサンは具象絵画の極みです。地獄図はまるでシュルレアリスム絵画のようで、そのパワーに圧倒されました。発見・再発見により今後どんな芸術家が現れるのか、時代の手のひらからこぼれた才能の発掘を歓迎いたします。
関連する投稿
- 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
- 「美術にぶるっ!日本近代美術の100年」展 東京竹橋にある国立近代美術館全館を使って大がかりな展覧会が開催されています。「美術にぶるっ!」というキャッチコピーが目にとまったので見てきました。いわゆる所蔵作品を選抜した展示で、学芸員の企画力と頑 […]
- 上野の「バルティス展」 先日、東京上野の都立美術館で開催されている「バルティス展」に行ってきました。テレビやポスターの宣伝効果があって、自分もあまり知るところがなかった巨匠の作品を一目見ようと出かけたのでした。露わなポーズ […]
- 横浜の「マックス・エルンスト展」 先日、横浜美術館で開催中の「マックス・エルンスト展」に行ってきました。シュルレアリスムの主流な芸術家の一人であるドイツ人画家マックス・エルンストは、画風がシュルレアリスムであるなしに関わらず、自分は […]
- 横浜そごうの「いのくまさん」 先日、出張先から帰る途中に横浜駅で楽しいポスターが目に入りました。平仮名で「いのくまさん」と書かれ、落書きのような猫の群像があって、思わず横浜そごう美術館に足を運んでしまいました。それは画家猪熊弦一 […]
Tags: 作品, 展覧会, 画家, 芸術家
The entry '発見・再発見で変わる美術史' was posted
on 6月 21st, 2011
and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.