創作絵本「ウド」の思い出

学生時代、彫刻を学ぶ傍らビジュアルな表現に興味を持ち、手製の絵本を作りました。当時好きだったドイツ表現派のモノクロの木版画を発想の源にして、数ページにわたる創作話を考え、文字のない絵本にしようと企画しました。題名は「ウド」。村で嫌われ者だった一人ぼっちのウドが、池で溺れそうだった少年を助け、それでも理解されずに再び一人ぼっちに戻っていく物語でした。全て自刻手刷りで限定30部。製本も自分でやりました。書物に対する興味関心と、将来絵本で何とか生計が立てられないかという淡い欲求も手伝って一生懸命作り上げた記憶があります。何冊かヨーロッパに持参して、当時ウィーン国立美術アカデミーでクラスをもっていた芸術家フンデルトワッサーに見せたこともありました。創作絵本「ウド」は今どこにあるのか、粗雑に扱っていたため手許に残っていません。でも書物に対する興味関心は今も続いています。今日のNOTEは創作絵本「ウド」の思い出という表題をつけましたが、絵本は思い出にしたくない魅力的な表現方法だと今も思っています。

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