「三本の糸杉」M・エルンスト

シュルレアリスムの画家マックス・エルンストは大好きな芸術家の一人です。いつもマチエールの巧みさと面白さに魅了されます。フロッタージュ(擦りだし)とグラッタージュ(削り)によって、画面が地質的であったり、また植物的であったりするエルンストの世界に思わず引き込まれてしまいます。国立新美術館で開催中の「シュルレアリスム展」には、いくつかのエルンストの絵画が展示されていました。その中の「三本の糸杉」は、画面構成が面白くて、つい立ち止まってしまいました。解説によると、エルンストは都会から米アリゾナ州のセドナに移り住んで、そこにある乾燥した地域に聳えたつ真っ赤な一枚岩の山々に創造力が刺激されたのだそうです。幾何学的に3分割された構図に、赤・黄・緑の細長い物体が描かれていて、どうやらそれが糸杉らしいのですが、むしろモニュメンタルな造形物とでも言った方が相応しいような雰囲気を持っています。描く行為を極力控え、偶発的な効果のもとで世界を作り上げていったエルンスト。その創造力に自分も活力をもらっています。

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