「保田春彦展」錆鉄の柱に再会

タイトルに錆鉄の柱と書きましたが、本来の題名は「集落の跡 Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ」。3点1組の錆鉄による作品で、床から柱状に伸びた上部に幾何的な構成が施された作品です。自分はこの作品が大好きで、平塚市美術館をはじめ、さまざまな空間でこの作品に会っています。観る人を拒絶するような理知に富んだ作品ですが、柱と構成された部分の割合が理屈抜きで好きになってしまったのです。現在、世田谷美術館で開催中の「保田春彦 デッサンによる人間探求」展は、裸婦クロッキーを中心とした展示内容になっています。自分は神奈川県立近代美術館鎌倉別館でこれを初めて見て、東京の南天子画廊で再び見て、さらに世田谷美術館で見たので通算三度目になります。だんだん脳裏にすり込まれてしまい、迷いなく引かれたクロッキーの運筆が心地よく感じられるようになりました。そこに置かれた木による「白い風景」シリーズと上記の鉄による作品、いずれも旧知のものですが、また違った場所にあると見たくなって出かけてしまうのです。自分の母校の大学の教壇に保田先生は立っていられたのに、ほとんど指導をうけたことがない自分です。でも距離を置きながら保田ワールドを見続けてきました。これからも見続けていきます。人生の先達の行く末を思い描きながら…。

関連する投稿

  • 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
  • 「美術にぶるっ!日本近代美術の100年」展 東京竹橋にある国立近代美術館全館を使って大がかりな展覧会が開催されています。「美術にぶるっ!」というキャッチコピーが目にとまったので見てきました。いわゆる所蔵作品を選抜した展示で、学芸員の企画力と頑 […]
  • 週末 制作と鑑賞の狭間で… 自分の制作には思索あり、他の作品の鑑賞もまた思索あり、で制作時間に追われているのは重々承知の上で、今日の午後は美術館に出かけてしまいました。午前中は午後の時間を空けるため、木彫の作業に集中力をもって […]
  • シュルレアリスム時代のジャコメッテイ 国立新美術館で開催中の「シュルレアリスム展」に出品されているアルベルト・ジャコメッテイの彫刻は、ある意味で自分の眼には新鮮に映りました。ある意味で、と言うのはジャコメッテイと言えば、全てを削ぎ落とし […]
  • 夏季休暇 美術館巡り 今日と明日の2日間夏季休暇を取っています。先週の2日間の夏季休暇は菩提寺の墓参りと長野県麻績にいる彫刻家池田宗弘先生宅にお邪魔して2日間を過ごしました。今回の夏季休暇の予定では、今日は都心の美術館巡 […]

Comments are closed.