対象から非対象へ

今月のRECORDは「崩れる」というテーマでやっています。欠損したモノの空間的な美しさを求めたいという意図からこのテーマにしたわけで、当初は日本古来からある「滅びの美学」が念頭にありました。ただ、「崩れる」や「壊れる」は即物的なモノだけでなく、その流儀や約束事にも適用できると思い立ち、絵画史を見ればルネサンス以来脈々と受け継がれてきた絵画上の遠近法や透視図法の約束事を、たとえばキュビズムやフォーヴィズムが「崩し」たり「壊し」たりしたことも今回のテーマにあうのではないかと考えました。究極の破壊行為は第一次大戦に起こったダダイズムですが、ダダをRECORDに持ち込むことは現段階では難しいと考え、20世紀初頭に遡って、心象によって風景を変形させた表現主義で、まずRECORDを試みようと考えています。ドイツ表現主義は自分が学生時代にちょっと齧ったことがあるので、比較的馴染みがあるのです。写実から心象へ、言い換えれば対象から非対象へ絵画表現の転換が行われたエポックでもあったわけです。この5日間のRECORDを表現主義の手法を取り入れてやってみようと思います。

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