北斎の表現に学ぶ

今月は葛飾北斎の怒涛図「男浪」「女浪」や富獄三十六景「神奈川沖浪裏」に見られる波頭の表現を、何とか自分のものにしようと模倣を続け、また模索を繰り返してRECORDにしてきました。襲いかかる波頭を、線による輪郭で巧みに描写した北斎の観察力・表現力には驚くばかりです。象徴主義の考え方や感じ方が初めから根付いているのが我が国の絵画表現だと言えます。大学受験時代に西洋絵画の基礎を学んだ自分は、西洋的写実のもつ遠近法や陰影の考え方をたっぷり知った上で、自国の文化遺産に触れ、その凄さに目を見張ってきました。いわば西欧の印象派の画家が日本の浮世絵を見て驚いたのと同じ道筋で、自分も北斎の大胆な構図や表現に魅せられたのでした。北斎が80歳を過ぎた頃に、ようやく絵が解ったと言ったことを何かの本で読んだことがあります。見習うべくは北斎でしょうか。こんな1ヶ月のRECORDで何が解ると言うのか、たどたどしい模倣に終わってしまう自分を恥じるばかりです。

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