20世紀の彫刻は…

「20世紀の彫刻はさまざまな局面と立場からはじめられていて、それはひとつの彫刻の理想というよりも、いわば『彫刻』という古典的な名をかりた、現代の『物体』の研究であり、空間の探究であり、複雑な次元の検証であるといってもいい、全く新しい技術と材料と形態の結合したものである。彫刻とは何か、いまはその定義を極度に単純なものに還元するところから出発して、そのあらゆる可能性を試みているのであろう。なぜなら彫刻という立体物にはあらゆる時間・空間的な付属物がこびりついているからで、それを剥ぎとることが同時になされているのである。~略~」(瀧口修造全集Ⅷ・みすず書房)現在、日本の多くの美術館の所蔵品にヘンリー・ムアを初めとする欧米の現代彫刻作品があります。自宅から近い美術館では、横浜美術館や箱根彫刻の森美術館があって、そこに行けば、いつでもムア、アルプ、カルダーやイタリア現代彫刻の数々の作品を見ることができます。そんな手を伸ばせるところに存在する現代彫刻は、ひと昔前までは情報が少なく、海外から紹介される僅かな機会でしか現代彫刻に触れることができませんでした。確かに今を生きる私たちの周辺の環境が急激に変わり、彫刻にとっては幸福な時代と言えるかもしれませんが、また同時に情報過多で造形が生まれる地域性が失われ、理論ずくめの作品になっていくことも否めません。定義を極度に単純なものに還元することを繰り返しやってみることが必要だろうと思います。

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