「ウィーン工房」について
2010年 8月 20日 金曜日
今夏、岐阜県高山市の美術館で見たウィーン工房の部屋。家具や椅子等の収められた空間に懐かしさを覚えました。自分がウィーンに滞在したのは1980年から85年までの5年間でした。ウィーンに行くまではウィーン工房の存在を知らず、20世紀初頭を彩った画家クリムト、シーレ、ココシュカだけは知識として頭にありました。ウィーンで生活をしていくうちにウィーンの近代化に興味が沸き、前述の画家のみならずユーゲントスティール(アールヌーボー)全体の絶妙な象徴化に魅かれていったのでした。ウィーン工房は建築家ヨーゼフ・ホフマンとデザイナーのコロマン・モーザーによって設立された革新的なデザイン工房で、ウィーン工芸美術館に作品が残されていました。滞在中はそれを研究しようという意図もなく作品を眺めていましたが、帰国後に興味が出て、ウィーン工房に関係のある展覧会が開催されれば必ず見に行っていました。まとまった作品が見られたのは、日本では高山の美術館が初めてで本当に驚きました。当時自分は生活費を切り詰めて、ウィーン工房に関する書籍を買ってきました。次第にドイツ語に疎くなっていく自分をどうしようもなく思いながら、図版に表れたウィーン工房のデザイン性・象徴性を考えながら、自分の中にある抽象衝動の参考にしているのです。
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