灯籠の造形を考える

亡父がまだ造園業を営んでいた頃、実家の庭には造園に使う石材や竹材、木材がゴロゴロしていました。その中にどこかで仕入れてきた石灯籠がありました。その石灯籠は、寺院にある手の込んだ灯籠と異なり、自然の岩に見立てた素朴な石の上に笠を乗せた簡単な作りで、それこそ造園の施工にすぐ使えるように無造作に置かれていました。あるべきところにきちんと置けば、それなりに鑑賞に耐えるものになるのでしょうが、半分風化したような石灯籠に自分は妙な愛着を覚えていました。灯籠は仏教伝来とともに大陸からやってきたもので、日本では飛鳥時代に遡ります。それが時代とともに鑑賞性が高まり、今で言う照明器具の走りになったようです。自分には陶彫に照明を仕込んだ作品があります。実家に放置されていた商売用の灯籠とイメージが重なり、陶彫による現代版灯籠を作ってみたいと考えています。いわゆる外に置く照明器具ですが、足元を照らし、人を導き入れる演出にちょっと魅力を感じています。

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