「バルラッハの旅」を読んで

「バルラッハの旅」(上野弘道著 風間書房)はドイツ近代彫刻家を取り上げたもので、著作の前編はバルラッハの足跡を辿りながらドイツを巡る、いわば紀行文のような構成になっています。数年前に日本で大きな展覧会があったとはいえ、バルラッハは日本での知名度があるとは言えません。自分は滞欧中にウイーンの美術館でバルラッハの彫刻と出会い、かなり刺激を受けたのですが、それがなければバルラッハを知り得ていませんでした。著者は既に他界されていて、その遺志を受け継いで、著者のご子息がこの本をまとめられたようです。バルラッハを初めとする近代ドイツ彫刻史を論じている本書を読むにつれ、著者の急逝が惜しまれてなりません。後編は教員養成大学の教壇に立っていた著者が大学と地域の小学校との連携に取り組んだ実践記録が記されています。陶芸を通して、地域で採取した土やリサイクルした窯で、子どもたちと焼き物作りに生き生きと取り組む日常が描かれていて、今後の教育に一石を投じるものがあるように思えます。

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