風景の再構築

近隣を散策していると、かつて自分が小学校に通った小道が変貌していて、昔の見慣れた風景が思い出せなくなっているのに気づきます。住宅が密集し、かつての小道より大きな通りが横に出来ていて、ここまで変わってしまうと自分の記憶に自信が持てません。そういえばこのあたりに小川があった、このあたりは田畑が続いていて、ここは土手になっていた、と記憶を辿りながら歩くと、郷愁に誘われることもあります。横浜に生まれ、横浜に育った自分ですら、そんな思いをしているので、遠いところに故郷を持っている人はなおさらだろうと思います。自分の脳裏にすり込まれた記憶の断片は、それが通学路だったり、自宅の裏山だったり、亡父が生業にしていた造園だったりするのです。とりわけ造園は、自分が中学生の頃から父の仕事を手伝っていたので、庭園は人のサイズで見渡せることができる自然を網羅した小宇宙だという認識があります。それが今になって別のカタチとなってあらわれているように思います。現在自分が試みている集合体による彫刻は、あるいは自分の中で血肉化した造園が基本になっていると思います。これは風景の再構築とも言えます。土や木という材質に魅力を感じ、そこに可能性を求めている自分は、幼い頃から接していた家業と因果関係があるように思えてなりません。

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