モンドリアンの矩形

オランダ人画家ピエト・モンドリアンの絵画との出会いは、中高生の頃に美術の教科書に掲載されていた図版です。たしかカンディンスキーが「熱い抽象」、モンドリアンが「冷たい抽象」との記述がありました。そこには木の枝を描いたモンドリアンの絵画がしだいに時と共に抽象化をしていって、最後に太く黒い直線と三原色による単純な幾何学的抽象絵画になるまでの過程が載っていました。同じオランダ出身のファン・ゴッホが、モンドリアン18歳の時に若くして悲劇的な死を迎えたことを考えると、近代を代表するゴッホと現代の象徴のようなモンドリアンに、たいして世代の違いがないことにちょっとした違和感を覚えます。モンドリアンはピカソの10歳年上と考えると、モンドリアンの革新さは一層光ります。モンドリアンは当時の立体派ではなく、完全に絵画的空間を壊そうとした言わば前衛だったように思います。大学時代に版画雑誌でモンドリアンの「ブロードウェイ・ブギウギ」を知りました。そこには黒い線はなく、小さな色とりどりの矩形が並んでいました。そのグラフィック的な表現は、絵画とデザインのボーダレスの時代を生み、芸術が建築の世界にも広がる契機を作ったと思っています。モンドリアンの矩形の美は、永い追求の果てに見出されたもので、それ故画面に配置された複数の矩形の絶妙なバランスに魅せられてしまうのではないかと思います。

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