マチスが作った礼拝堂

画家アンリ・マチスはピカソと並ぶ20世紀最大の巨匠です。マチスは色彩の画家と呼ばれ、とくに自分はマチス晩年の単純化した作品が大好きです。そんなマチスが最晩年に作った礼拝堂があります。テレビや雑誌で紹介されていますが、自分はまだそこに行ったことがありません。いずれ時間が出来たら行ってみたい場所のひとつです。それは南仏ヴァンスにあるロザリオ礼拝堂。写真で見るとステンドガラスから入る光が、内部の白壁に色彩を落として何とも美しい空間を感じさせます。白壁に線のみで描かれた聖ドミニク像があるようですが、のびやかなタッチで描かれた壁画を一度じっくりこの目で見てみたいと思っています。「特にカトリック信者でもなく、かつては異教徒のようにさえ見られていたマチスだが、こうした宗教的な仕事をしたことについては、いろいろ推測されたが、直接の動機は極めて自然に訪れたのであったし、彼があくまで人間的な画家であったことの一つの自然な帰結であったと思えるほど、その仕事には無理が感じられないのである。〜以下略〜」(瀧口修造全集2より)画家として、作品を空間の中で息づかせることが出来るなら、それは理想であり、ましてや己だけの世界観をそこで表出できるなら、芸術家として生きた最高の証ではないかと自分には思えます。

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