舞台美術への憧れ

家内が美大の空間演出デザイン科に学んだ理由に舞台美術をやりたかったことがあります。自分も似たようなところがあって、自作の立体作品を舞台にのせ、照明や音響を導入した総合芸術をやってみたいと考えていた時期があるのです。それは背景としての舞台美術ではなくて、舞台美術そのものもドラマを解釈して主張する新しい劇空間のあり方を模索するものです。演じる役者と対峙するような緊張感のある舞台ができないものかと、当時の自分にはベースとなるものがないにもかかわらず、そんな絵空事を思っていました。「瀧口修造全集2」に掲載されている「ノグチと舞踊」の章を読むと、昔自分が考えていたことを、国際的な名声を持つイサム・ノグチがすでに実践をしていて、しかも総合芸術として完成されていたことがわかりました。ノグチの伝記の中にも舞台美術界での活躍は書かれていましたが、瀧口流の捉え方によって、新しい劇空間がノグチの手によって1940年代には出来ていたことを知りました。しかしながら自分は今でも劇空間の魅力に憑かれています。空間を提示できるところはギャラリーだけではないと思っているのです。

関連する投稿

  • キュビズム創始者ブラック ピカソとともにキュビズム創始者であるジョルジュ・ブラックについては、今まで特に大きな関心を持ったことはありませんでした。もちろんブラックの代表的な絵画はすぐに思い起こすことが出来るし、キュビズムが近 […]
  • イサム・ノグチの陶彫 「ノグチは陶器を彫刻として焼いている。すくなくとも彫刻家でなければ興味をもたない仕方で焼いているといってよいだろう。もちろん西洋流にいえばテラコッタ彫刻の伝統があって、そこから彼は一跨ぎで日本の陶器 […]
  • 瀧口流「H・アルプ」論 瀧口流「○○」論は今日で最後です。シリーズにするつもりはなかったのですが、文中に興味関心の高い彫刻家が続いたので、つい一人ひとりを取り上げてしまいました。アルプは抽象的な有機形態を作る彫刻家で、ポピ […]
  • 瀧口流「I・ノグチ」論 「ノグチは西欧の環境で生活しながらも、たえず東洋に眼を向けている。数回にわたる東洋遍歴のみならず、彼の血液が力づよく誘うのであろう。が私たちの眼からは、それほど彼のある作品は東洋的と感じられないかも […]
  • 瀧口流「A・コルダー」論 アレキサンダー・コルダーは空中に浮遊するモビルで世に知られた彫刻家です。自分の学生時代に見た美術雑誌に、コルダーの作業場の写真が掲載されていて、そこはまるで町工場のようなところでした。鉄の部品が所狭 […]

Comments are closed.