瀧口流「H・アルプ」論

瀧口流「○○」論は今日で最後です。シリーズにするつもりはなかったのですが、文中に興味関心の高い彫刻家が続いたので、つい一人ひとりを取り上げてしまいました。アルプは抽象的な有機形態を作る彫刻家で、ポピュラーな作家です。その形態は丸彫りにもレリーフにも応用でき、手業を残さない作風です。それはひと目でアルプとわかる独特な雰囲気を持っています。「瀧口修造全集2」の中にこんな文章が掲載されています。「アルプのような特異なスタイルをもった作家に、個人性を没却するということは、非常に矛盾したように聞こえるが、個人的な誇示のない、人間性を直接にあらわす宇宙的芸術こそ彼の理想とする芸術なのであって、いいかえれば、手工芸的な個人性の効果を否定しても、独創的なデザインが可能であるという造形の一原理を暗示していることになる。この点では、アルプとはまったく性格を異にするモンドリアンも同じ立場に立っているといえるだろう。アルプがしばしば共同制作をしたのもその証拠になるかもしれない。〜以下略〜」つまりアルプは個人性を排除して、普遍的で独特なカタチに到達したと言えるかもしれません。曲面で被われたユーモラスとも言える生命体。そんなアルプ的発想から発展した芸術家はかなりいるのではないかと思います。

関連する投稿

  • 「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」
    昨日NOTE(ブログ)に書いたジャン・ジュネの著作とは、表題の「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」(鵜飼哲 訳 現代企画室)のことです。彫刻家ジャコメッティは、自分が学生時代から興味を寄せている巨匠で、ヘンリー・ムア...
  • 「擬似幾何学的」なブランクーシ
    現代彫刻の父ブランクーシに関する文献に出会うと不思議な興奮を覚えます。NOTE(ブログ)にも何回か登場したブランクーシですが、自分は若い頃にルーマニアに何度か出かけ、木造民家の柱に見られる呪術的で抽象性を伴う浮き彫りにブ...
  • 夏気分を惜しみながら…
    今日で8月が終わります。月が変わることに郷愁を感じるのは夏の特徴かもしれません。開放感あふれる夏だからこそ流行り歌にもなり、移ろう夏気分を惜しむ情景になるのだと感じます。今月の創作活動を省みると、とにかく暑い工房の中で滴...
  • オブジェの評論集を読み始める
    「問いなき回答 オブジェと彫刻」(建畠哲著 五柳書院)を読み始めました。自宅の書棚に眠っていた書籍で、一度読んでいるかもしれないと思って読み始めましたが、どうやら購入したまま書棚に仕舞いこんでいたことがわかりました。目次...
  • 「新宿中村屋 相馬黒光」を読んで
    表題の書籍を自分としては短時間で読むことができました。彫刻家荻原守衛との関わりでしか知らなかった相馬黒光でしたが、彼女の生涯や生きた時代のことを考えると、荻原守衛との関係はほんのひとコマに過ぎないと思えます。相馬(旧姓 ...

Comments are closed.