「瀧口修造全集」を紐解く

先日読んだ「老人力」(筑摩書房)から一転して「瀧口修造全集1」(みすず書房)を紐解きました。軽妙洒脱な「老人力」と、幾重にも重なった深い洞察に裏づけされた瀧口修造の論文集。あまりにも違う世界を描いても、それを読んでいる自分には不思議と違和感はありません。「老人力」の赤瀬川氏は前衛芸術を体現した人で、その運動の仲間に瀧口氏の薫陶を受けた人がいたりするためかもしれません。あるいは赤瀬川氏と瀧口氏の接点がどこかにあるようにも思えます。瀧口修造は美術評論家であり、詩人であり、シュルレアリスムの理論(翻訳も含めて)を提唱した我が国の第一人者です。自らもアート制作を試みています。J・ミロやA・ブルトン等の交流もありました。これほど魅力的な仕事をした人がいるでしょうか、もう少し世代が近ければ自分は何としても瀧口修造に会いにいったと思います。夏に読むはずだった著作集を手に入れて、ようやく自分は瀧口修造の全貌に触れようとしています。しばらくは重い書籍を抱えて通勤電車に揺られる日々が続きます。瀧口修造が語る芸術家の作品を頭に描いて、その論考に触れるのは自分にとって大変幸せな時間です。

関連する投稿

  • 「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」の読後感
    昨年暮れから通勤鞄に入っている「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 みすず書房)をやっと読み終えました。ずいぶん長く携帯していた書籍です。当時フランス領だったタヒチを初めとする島々で、彼の地...
  • ベルナール・ビュフェ美術館
    日曜日に相原工房スタッフの遠足として出かけたベルナール・ビュフェ美術館は、小高い丘に建つ瀟洒な建物で周囲には木々があって素晴らしいところにあります。ビュフェは若くして世に出た画家で、灰色がかった色彩とそこに佇む細い人物が...
  • 「ノア・ノア」の情景描写
    通勤途中に読んでいる「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 みすず書房)にある「ノア・ノア」は、ゴーギャンがタヒチ滞在の回想を綴ったもので、詩情溢れる文章です。ゴーギャンがタヒチの民族を受け入...
  • 「ノア・ノア」の出版事情
    「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 ダニエル・ゲラン編 岡谷公二訳 みすず書房)を通勤の途中に読んでいます。同書の中に「ノア・ノア」という章があって、その美しく香しい情景描写に没頭してしまいました。「...
  • 「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」
    自宅の書棚には学生時代に購入して途中で放棄した書籍がたくさんあります。書棚を眺めるたび再読をしたいと思いつつ30年が経ってしまいました。今回読み始めた「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 み...

Comments are closed.