「老人力」を読む

「老人力ときて、あとがきとなると、何だかもう遺書みたいだけど、そうではない。ふつうにあとがきである。」書店で立ち読みをして、まず目についたのは本書のあとがきでした。思わず吹き出して、即購入。「〜力」という最近流行っているコトバは、この赤瀬川原平著「老人力」が発端らしいのです。赤瀬川氏は大学の先輩にあたる人で、世代はだいぶ違うのですが、前衛美術集団「ハイレッドセンター」で活躍したことは美術雑誌等で知っていました。自分の学生時代は、こうした前衛集団はいろいろ理論武装していて過激なパフォーマンスがあったりして、近づき難い存在でした。アートをやって逮捕されたりするのは、自分にはついていけない世界でした。当時自分が関心をもったアングラ演劇集団も似たところがあったのですが…。そのうち赤瀬川氏はテレビに出てコメントをするようになって、親しみやすく、あるがままの人柄が滲み出ている感じがしました。そこにこの「老人力」。ともかく面白い本でした。あっという間に読んでしまいました。自分もそんなことを考える歳かなぁと思いつつ、力が空回りしてしまう若年時代を振り返り、なるほど老人力は老人でなくても感受したい力だと思うようになりました。これは生きるツボのようなもので、力まずに豊かに自分を表現できる術を学ばせてくれました。                       Yutaka Aihara.com

関連する投稿

  • 「絵画、彫刻の自律性の追究」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の第一部「19世紀における『画家=彫刻家』と『芸術家=職人』の登場」の第1章「画家と彫刻家」の「3 […]
  • 非存在という考え方 あまり夢を見ない私が、ある晩に見た夢を覚えていて、夢の中では学生時代に遡って彫刻を学び始めた頃の私になっていました。人体塑造をやっていた私は、どこの部分の粘土を削り取ったらいいのか散々考えていました […]
  • イサム・ノグチの両親について 先日から「石を聴く」(ヘイデン・ヘレーラ著 北代美和子訳 […]
  • コトバと彫刻について 私は彫刻に関わるようになったのは大学の1年生からで、それまで工業デザインを専攻するつもりだった私が、極端な方向転換をして初めて彫刻に出会ったのでした。本格的な立体表現を知らなかった私は結構混乱して、 […]
  • 「日本を語る 多様で一途な国」について 「日本流」(松岡正剛著 筑摩書房)は、読み易いうえに視点がユニークなので、通勤途中やちょっとした休憩時間に、つい頁を捲って読んでしまいます。第一章は「日本を語る […]

Comments are closed.