「流政之作品論集」

彫刻家流政之を知ったのは高校生の時でした。書店で立ち読みした美術手帳に彫刻写真が掲載されていて、若かった自分はカッコいいなぁと思ったように記憶しています。美大の彫刻科に入って彫刻を本格的にやり始めた頃、西武美術館で「流政之展」があって、自分が大学で学んでいるものと表現の土台が違うように感じて、それこそ表面を舐めるように見ていました。スパっと切ったような石彫は思い切りが良くて、石でこんなふうに作れたら気持ちいいだろうなぁと思えました。アートの世界では、ナガレ作品はいずれもカーヴィングという古く普遍的な概念を持っていて、自分も当時モデリングに拘っていたので、当時流行の現代美術よりずっと好きになっていました。その作品論集を書店で見つけて、読むことにしました。ずい分前にイサム・ノグチ庭園美術館を訪ねて、香川県の庵治まで出かけた時に、もう少し足を伸ばしてナガレスタジオを見ておくべきだったと思いました。面識の無い自分に会ってくれないにしても、外側からだけでもレンガ作りのスタジオを見ておけば、何かインスピレーションが湧いたかもしれないと思ったのです。そんなことをあれこれ思いながら、写真版の多い論文集を読み終えました。

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