闇の世界を描く漫画

今晩のNHKプロフェッショナルでは、漫画家井上雄彦の仕事を取り上げていました。自分はあまり漫画を読む方ではないのですが、唯一「バガボンド」や「リアル」を愛読しています。作者の仕事に対する熱情や真摯な姿勢が創作に表れているからこそドラマに惹き込まれ、さらに展開されるキャラクターの心理描写に同感してしまうのでしょう。とくに注目したのは闇を描くというテーマです。自分の内面を掘り下げ、素の自分自身と対面して、人間の持つ弱さを抉り出し、それによって照らし出される光の部分をも表現するという意図に、漫画という媒体を使った文学にも劣らぬ世界観を発見しました。絵がある以上、人の表情や動きにそうしたものを語らせなければならず、卓越した描写力に加え、作者自身の心の動きが投影されてしまう世界に凄みを感じてしまいました。漫画はサブカルチャーと言われているものの今や重要なポジションを与えられている分野です。仕事場で苦しむ作者を見ていて、仕事は違えど自分にも共通した部分を見て取って、ここにも共感を覚えたひと時でした。                         Yutaka Aihara.com

関連する投稿

  • 平塚の「川瀬巴水展」 先日閉幕した展覧会を取り上げるのは、自分の本意ではありませんが、展覧会の詳しい感想を述べたくてアップすることにしました。画家川瀬巴水のまとまった仕事を見たのは、私にとって初めてではないかと思います。 […]
  • 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
  • 新宿の「モンドリアン展」 先日、見に行った東京新宿のSOMPO美術館で開催されていた「モンドリアン展 […]
  • 東京竹橋の「あやしい絵展」 先日、東京竹橋にある東京国立近代美術館で開催されている「あやしい絵展」に家内と行ってきました。ウィークディにも関わらず鑑賞者が多く、コロナ渦の影響もあってネットでチケットを申し込む方法は定着したよう […]
  • 甲斐生楠音「横櫛」について 先日、見に行った東京国立近代美術館の「あやしい絵展」では、日本美術史に大きく取上げられている有名な画家がいる一方で、マニアックな画家も多く、私が思わず足を止めた作品を描き上げた画家も、私には名に覚え […]

Comments are closed.