「魔術的芸術」遠まわりの…

A・ブルトンの「魔術的芸術」を今夏じっくり読んでいます。表題の「遠まわりの魔術」というのは本書の中で中世の芸術活動を扱った章です。ビザンティンの宗教的厳格さからの解放によって、悪魔のテーマを画家たちが挙って取り上げる時代背景があり、デューラーやグリューネヴァルト、さらにボードレールの言葉に「ひとりの人間の知性が、どうしてこれほどの悪魔的なものや驚異をふくみ、これほど恐るべき不条理を生み、描写しえたのだろうか。」と言わしめたブリューゲルの活躍が記載されています。後半はボスの諺に基づいた宗教絵画、とりわけ信仰主義と反抗精神とが奇妙なかたちで結びついた芸術家のことが論じられています。ボスの代表的な絵画における様々な論証が、ボス・ワールドの魅惑に憑かれた自分にはたまらなく楽しくて、この「遠まわりの魔術」の章だけでも充分と思わせるだけの知識が詰まっていると感じました。「ボスは、理にかなったカタルシスによってではないにしても、少なくても、<善>と<悪>とが大きく発展したかたちで融和している作品の完成によって、自分が『救われている』と考えているように思われる。」という箇所に大きく頷いてしまいました。

関連する投稿

  • 「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」の読後感
    昨年暮れから通勤鞄に入っている「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 みすず書房)をやっと読み終えました。ずいぶん長く携帯していた書籍です。当時フランス領だったタヒチを初めとする島々で、彼の地...
  • ベルナール・ビュフェ美術館
    日曜日に相原工房スタッフの遠足として出かけたベルナール・ビュフェ美術館は、小高い丘に建つ瀟洒な建物で周囲には木々があって素晴らしいところにあります。ビュフェは若くして世に出た画家で、灰色がかった色彩とそこに佇む細い人物が...
  • 「ノア・ノア」の出版事情
    「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 ダニエル・ゲラン編 岡谷公二訳 みすず書房)を通勤の途中に読んでいます。同書の中に「ノア・ノア」という章があって、その美しく香しい情景描写に没頭してしまいました。「...
  • 「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」
    自宅の書棚には学生時代に購入して途中で放棄した書籍がたくさんあります。書棚を眺めるたび再読をしたいと思いつつ30年が経ってしまいました。今回読み始めた「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 み...
  • 夏気分を惜しみながら…
    今日で8月が終わります。月が変わることに郷愁を感じるのは夏の特徴かもしれません。開放感あふれる夏だからこそ流行り歌にもなり、移ろう夏気分を惜しむ情景になるのだと感じます。今月の創作活動を省みると、とにかく暑い工房の中で滴...

Comments are closed.