カール・マルクス・ホフ

1980年から5年間住んでいたオーストリアの首都ウィーンでは、頻繁に地下鉄を利用していました。あの頃出来たばかりの地下鉄はとても奇麗でモダンでした。郊外のハイリゲンシュタットまで出かけた折、当時共産主義だった東欧でよく見かけた巨大なアパートが目前に広がっていたのが印象に残っています。褪せた赤色の壁に「カール・マルクス」と書かれていて、やはりここは西欧の東の端、つまり東欧との境にあるんだという意識を持ちました。そんなカール・マルクス・ホフが「奇想遺産」という本に出ていて、懐かしさと同時に、当時の自分の寂寥感が思い出されてしまいました。「奇想遺産」を読むと、このアパートには幼稚園や図書館、レストラン、共同洗濯場、共同浴場などの施設を備え「大衆のユートピア」を実現していたことがわかりました。自分の知らなかったウィーンがそこにあって、一面しか見えていないあの頃の学生生活に歯痒さを覚えました。           Yutaka Aihara.com

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