「金属」という素材

私の学生時代、ちょうど彫刻を始めた頃は野外展が華やかで、都市計画と連動して街の中に彫刻が置かれ始めた時代でした。鏡面のように磨いたステンレススティールの構成的作品が街の風景を映し出して、現代の空気を人々に伝えていました。高層ビルの庭には金属の巨大彫刻がよく似合います。自分の通っていた大学にも金属を素材に作品を作る売れっ子彫刻家が教壇に立っていました。自分は塑造をやっていたにも関わらず、そうした彫刻の潮流に浮き足立っていました。でも自分のイメージは錆びた鉄製の古い工場のようなところに向けられていて、どうもそういう泥臭い世界が自分にとって意欲を感じるものでした。溶接の資格を得たのも鉄で作品を作りたかったためでしたが、ずっとかなわぬ夢で今まできてしまいました。金属、とりわけ錆鉄は自分には憧れの素材です。憧れているからこそ未だに手が出せません。自分の作り出す陶彫は錆鉄のようだと人に言われます。これを鉄で作ったら当たり前だから逆につまらなくなるとも言われます。それでも鉄で作品が作りたいと願っている自分がいます。溶接の資格はとっくに無くなってしまい、時間が出来たら、もう一度講習を受けなおそうと思っています。     Yutaka Aihara.com

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