「無限の網」を読む

表題は草間弥生著「無限の網」(作品社)で、水玉や網が増幅していく大掛かりな造形作品をパワフルに作り出している女性アーティストの自伝です。草間弥生という作家は、ちょうど30年前の自分の学生時代に、南天子画廊から出版された「快楽宣言」(篠田守男著)の中にあった一文と写真で知った作家です。アメリカで大変な評価を受けた人で、確かに「無限の網」の本文にある通り、日本ではスキャンダラスな側面で捉えられていました。本書を読むと、かなり若い頃から神経を病んで、自己治癒のために芸術に没頭している有様が伝わります。常軌を逸した表現世界は見る側を圧倒して、その仕事量は凄いの一言に尽きます。自伝の中で面白かったのは、米人アーティストの評論家が書く評論ではなく草間弥生だけが知る彼らの生き様です。現代美術史に名が残っている人たちが、身近な存在として感じられたのがとても楽しく、また興味津々でした。草間本人が美術家か小説家になるか迷ったと本書にある通り、卓抜した文章に畳み掛けるような勢いがあって、瞬く間に一冊読み終えてしまいました。

関連する投稿

  • 「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」の読後感
    昨年暮れから通勤鞄に入っている「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 みすず書房)をやっと読み終えました。ずいぶん長く携帯していた書籍です。当時フランス領だったタヒチを初めとする島々で、彼の地...
  • ベルナール・ビュフェ美術館
    日曜日に相原工房スタッフの遠足として出かけたベルナール・ビュフェ美術館は、小高い丘に建つ瀟洒な建物で周囲には木々があって素晴らしいところにあります。ビュフェは若くして世に出た画家で、灰色がかった色彩とそこに佇む細い人物が...
  • 「ノア・ノア」の情景描写
    通勤途中に読んでいる「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 みすず書房)にある「ノア・ノア」は、ゴーギャンがタヒチ滞在の回想を綴ったもので、詩情溢れる文章です。ゴーギャンがタヒチの民族を受け入...
  • 「ノア・ノア」の出版事情
    「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 ダニエル・ゲラン編 岡谷公二訳 みすず書房)を通勤の途中に読んでいます。同書の中に「ノア・ノア」という章があって、その美しく香しい情景描写に没頭してしまいました。「...
  • 「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」
    自宅の書棚には学生時代に購入して途中で放棄した書籍がたくさんあります。書棚を眺めるたび再読をしたいと思いつつ30年が経ってしまいました。今回読み始めた「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 み...

Comments are closed.