「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」

東京国立博物館で開催中の「大琳派展」に俵屋宗達下絵・本阿弥光悦筆による「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が展示されていました。飛翔する鶴の群が金銀泥で描かれ、そこで繰り返し変化する鶴の姿が、自分にはアニメーションのようにも見えました。俵屋宗達の画面構成の新しさは現代にも通じるものがあると思います。そこに本阿弥光悦の三十六歌仙の和歌が配置され、その文字の抑揚が絵画と相まって、何とも美しい世界観が表れていると感じました。平面に表現された書と絵画でありながら、文字の並びに空間を意識させ、さらに背景にある鶴にも奥行きと広がりを感じとりました。本阿弥光悦という人は、ただならぬセンスを持っていて、筆を自在に扱い、さらに空間造形も捉えることができる天才だったように思えます。この2人の才能が交差する作品は一度観るとその場を離れがたい魅力がありました。

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