美術家たちの「南洋群島」展

東京の町田市にある国際版画美術館で表記の展覧会をやっていたので見に出かけました。「南洋群島」という聞き慣れない名称は、赤道付近の島々のことで、第一次大戦後にドイツ領だった群島を日本が統治することになり、当時の美術家も彼の地に出かけ、作品を残したことが本展の展示内容になっています。ちょうどゴーギャンが行ったタヒチを連想させ、いずれの邦人美術家も島の風物を描いていました。土方久功、杉浦佐助、儀間比呂志の師弟3人が展示の中心となっていましたが、師弟といっても作風の影響は無く、3人3様の表現方法があって、当時の日本美術界の窮屈さからは程遠い自由な雰囲気を感じました。ただ、時代の影響があると思われ、先達のゴーギャンに比べると、日本が大正から昭和初期にかけて戦争の狭間に置かれた状況のせいか作品が多少暗く感じられました。展覧会に行く前は、明るい素朴さに溢れている作品をイメージしていたので、時代の風潮を纏った作品の数々に、邦人ならではの生真面目さを感じてしまいました。         Yutaka Aihara.com

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