J.ラッセル著「ヘンリー・ムア」

先日のブログにムアについての文章を載せましたが、今回は私見ではなくイギリスの評論家による研究書からの掲載です。研究書は中途半端なところで読むのを止めてしまい、自宅の書棚に眠っていました。今回それを取り出して最後まで読んでみました。ムアが坑夫の息子として生まれた時から、やがて彫刻家として数々の栄誉を与えられ、晩年フイレンツエで回顧展をするまでの軌跡とそれぞれの時代を通した作品の思考過程、社会との関わり等が図版を交えながら述べられていました。一貫してムアが素材と真摯に向き合って、新たな表現を獲得していく様子が詳細に書かれてあって、自分も彫刻を作っている端くれとして大変参考になりました。彫刻という表現方法は、頑強な身体と長く持続できる意思がないとできないものだということもつくづく思い知らされました。それでもなお語ることができない作品の謎の部分があると文中で指摘しています。後世の研究を待つと締めくくられていましたが、これ以上の研究書が果たしてあるのかどうか。ムアに改めて敬意を感じたひと時でした。                          Yutaka Aihara.com

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