ステンレスという素材

ステンレスという素材には学生時代からいろいろな思いがあります。当時は野外彫刻展がブームになって、自分が学んでいた大学の先生たちも新しい工業用の素材を使った大きな野外彫刻を作って展覧会に出品していました。そうした中でひときわ目立つ素材がステンレスでした。故・井上武吉先生や保田春彦先生が作り出すステンレスの幾何抽象の世界に、すっきりした空間を発見し、都会的なセンスに憧れた時期もありました。自分がクールな抽象になかなか辿り着けないことがわかって、次第に自分は土を使った作品になっていきました。つまり泥臭い素材で現代的な思考をする方法を選んだのでした。しかし、またここにきてステンレスの作品に取り組もうとしています。「RECORD」の一連の小作品の中で、ステンレスの幾何抽象彫刻をイメージした作品を作り続けているのです。ステンレスという素材を意識してから30年が経っています。思考の振り子が戻っていくような感覚に襲われながら、今ステンレスの板を手にとって作業している自分がいます。 Yutaka Aihara.com

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